とある國のヒメ

「・・・ん。」

私はまた眠っていたようだ。

前とは違い、とてもすっきりした気分。

「よく寝た~。」

「寝すぎ。」

間髪あたえず、起きたすぐの私に嫌味を言ってくる。

「え、ちょっと他に何かいうことあるでしょっ。」

確かに寝てばっかりだけど・・・。

「んじゃ、そろそろ移動しますか。」

移動?

「どこに?」

「・・・鹿央国との国境へ。」

鹿央国との国境って、カイが前に兵士として旅立ったところよね。

なぜそこに?

「危なくないの?城の兵士に見つかったら・・・。」

「大丈夫です。それに国境といっても、その手前にある小さな山村だ。そこにいるのはみな信頼できるものばかり。頼れるものはそれしかない。」

カイが言うなら大丈夫そうね。

「うん、わかった。」

「そうだ、これかぶっててください。」

大きな布を私に放り投げてきた。

頭もかくれるマント?

「ありがと、でも私寒くないし平気だよ。」

「いや、顔やその髪をできるだけ隠せるように。」

「私の髪?」

顔は分かるけど・・・私の髪?

私の髪は背中まであるロングヘア。

少しウェーブがかかっている、桃色の髪。

髪色はお母様の遺伝だ。

「その髪色は王族、皇族の証。できるだけ目立たせないほうがいい。」

私は自分の髪をつまんで、目の前までもってきた。

桃色の髪が太陽の光にあたる。

「・・・うん。」

私は手をはなし、マントを頭からすっぽりとかぶった。


< 62 / 65 >

この作品をシェア

pagetop