僕らが今いる今日は
》ねじれの位置
·素描
わたしは月曜日ほど朝が憂鬱な日はないんじゃないかと思う。
一週間が始まるというのは、なんとも言えない気だるさがある。
支度を済ませて一階に降りると、ダイニングテーブルには智基がいた。
声をかけると、味噌汁を啜りながら一応「おはよう」と答えてくれる。
鍋に残っている味噌汁とご飯を取り分けて、智基の向かいに座る。
お兄ちゃんは今日は仕事が休みだし、昨日も終電だったみたいだからどうせ起きてこない。
両親は仕事、おじいちゃんは朝の散歩にでも出かけたのだろう。
弟と二人、静かな朝だ。
我が家の母は完璧主義者だ。
自分に厳しいぶん、他人にも厳しい。
仕事熱心で、絶対に妥協はしないし、甘えや言い訳も許さない。
母親として、妻として、嫁として、精一杯頑張ってきたという自信と誇りに満ち溢れている。
そういう人だ。
正しくて、押しつけがましくて、だけど、間違ったことを言っているわけではないから、誰もお母さんを否定できない。
お兄ちゃんはそんなお母さんに反発して、高校を中退した。
一応仕事はしているみたいだけれど、昨日みたいに夜中まで遊んで帰ってくることも多い。
おじいちゃんはお母さんが嫌いだ。
女は慎ましくておしとやかなのが一番だと思っている。
毎日バタバタと忙しく仕事や時間に追われるお母さんが気に食わないらしい。
とにかく我が家の女王陛下は敵が多いのだ。
おかげでいつも家じゅうピリピリとした空気が流れている。
そのせいだろう。
弟の智基はおとなしい。
聞き分けがよくて、空気を読むのが上手い。
余計なことも、大事なことも言わない。
だからきっと、我が家のいざこざの一番の被害者は、智基なのだろう、と思う。
*
靴も履き終えて家を出る直前に、智基から「真思」と呼び止められた。
「これ、今日新聞と入ってた」
差し出された広告を智基から受け取って、サッと目を通す。
“和洋菓子·多軌屋、本日限り、40個限定、ほうじ茶シュークリーム販売”
思わずにやける。
わたしは、自分が思っている以上に、単純なのかもしれない。
一週間が始まるというのは、なんとも言えない気だるさがある。
支度を済ませて一階に降りると、ダイニングテーブルには智基がいた。
声をかけると、味噌汁を啜りながら一応「おはよう」と答えてくれる。
鍋に残っている味噌汁とご飯を取り分けて、智基の向かいに座る。
お兄ちゃんは今日は仕事が休みだし、昨日も終電だったみたいだからどうせ起きてこない。
両親は仕事、おじいちゃんは朝の散歩にでも出かけたのだろう。
弟と二人、静かな朝だ。
我が家の母は完璧主義者だ。
自分に厳しいぶん、他人にも厳しい。
仕事熱心で、絶対に妥協はしないし、甘えや言い訳も許さない。
母親として、妻として、嫁として、精一杯頑張ってきたという自信と誇りに満ち溢れている。
そういう人だ。
正しくて、押しつけがましくて、だけど、間違ったことを言っているわけではないから、誰もお母さんを否定できない。
お兄ちゃんはそんなお母さんに反発して、高校を中退した。
一応仕事はしているみたいだけれど、昨日みたいに夜中まで遊んで帰ってくることも多い。
おじいちゃんはお母さんが嫌いだ。
女は慎ましくておしとやかなのが一番だと思っている。
毎日バタバタと忙しく仕事や時間に追われるお母さんが気に食わないらしい。
とにかく我が家の女王陛下は敵が多いのだ。
おかげでいつも家じゅうピリピリとした空気が流れている。
そのせいだろう。
弟の智基はおとなしい。
聞き分けがよくて、空気を読むのが上手い。
余計なことも、大事なことも言わない。
だからきっと、我が家のいざこざの一番の被害者は、智基なのだろう、と思う。
*
靴も履き終えて家を出る直前に、智基から「真思」と呼び止められた。
「これ、今日新聞と入ってた」
差し出された広告を智基から受け取って、サッと目を通す。
“和洋菓子·多軌屋、本日限り、40個限定、ほうじ茶シュークリーム販売”
思わずにやける。
わたしは、自分が思っている以上に、単純なのかもしれない。
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