僕らが今いる今日は

·試合

 ゆうべまでは、陸上の試合なんて、観に行くつもりはなかった。
ベッドの枕元に置いていた携帯が鳴ったのは、日付が変わる、少し前だった。
サブディスプレイに白く浮かんだ名前は、桐島くん。
半分眠りかけていたわたしは体を起こすのが面倒で、そのまま手を伸ばして、電話を受けた。

『平岡?平岡だよな?明日絶対来いよ。いいな、絶対だぞ』

言いたいことを一方的に言って、桐島くんは電話を切った。
あっという間の出来事に呆然としていると、ダメ押しとばかりにメールまで送ってくる。

〈木原に迎えに行かせるからな。ぜーったい来いよ!!〉

ホントにお節介。
行かないって言ってるじゃん。
携帯をぱたんと閉じて、再び寝る態勢に入った。

行くつもりなんてなかったのだ、本当に。


     *


 でも、朝になって気持ちが変わった。
空が青かった。
雲がほとんどなくて、綺麗な青空だった。
まるで、梅雨に入ってしまう前に、空の鮮やかさを見せつけるような。
だから、ほんのちょっとだけ、気が向いた。
行ってもいいかな、外で過ごす週末も悪くないかもしれない、なんて。

 迎えに来た望は「なんで制服なの?」と笑っていたけど、そんなのいちいち服を選ぶのが面倒だからに決まっている。

「どういう気持ちの変化なの?
昨日まであんなに渋ってたのに」

一瞬、返答に詰まった。
これといった理由があったわけではない。

「…お日様が恋しくなった」

わたしには望がどこに納得したのか、いまいちわからないけど、望は「そうだよ。引きこもって勉強ばっかりしてたら体に悪いよ」と頷いていた。


今日も、暑い一日になりそうだ。

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