大人恋愛部
「…チーフそんなに睨まないで下さいよぅ。深い意味は無いんですよ?
ただ華を添える要員じゃなくて仕事要員として
チーフを選んだなーって思っただけです。」

鮎川は言うだけ言うとそそくさとデスクから去って行った

くそっ逃げたか…

鮎川の言葉は特に引っかかるものではなかった
別にお茶汲みに行くわけじゃない
接待するわけじゃない

『仕事要員』?最高じゃない


……

…そう思うのに


どうしてか
『華を添える要員じゃなくて』
と言う鮎川の声が耳にこびりついて離れなかった

そして
ふとデスクの隅にある小さな鏡を手にした

そこに映るのはいつもの見慣れた顔

30歳前にして華とは言えないのは十分理解している





……理解しているのにこんなにも引っかかるのは何故だろう?


「チーフ般若みたいな顔してどうしたんですか?」

突然
背中から武藤の声がかかって慌てて鏡を閉じた


「般若みたいな顔?
さっきまで鏡見ていたけどそんな顔して無かったじゃない。」


「してますよ。
ほら、今も。眉間にしわが…。」

武藤に指摘されて
慌てて眉間のしわをなでた

この皺を作ってるのはお前らだろ!
という言葉は(余裕ある大人の女性として)胸の中にしまってくことにする




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