大人恋愛部
それから
部長とは仕事の事で盛り上がり
気が付けば終電ギリギリの時間になっていた

「今から駅に向かったらギリギリだから
タクシー捕まえよう。

送るよ。」


お手洗いから帰ってくると既に会計は済まされていたようで
お礼もそこそこに部長にタクシーに追い込まれた


「いえ、ご馳走になったのにタクシーなんて申し訳ないです。
私終電で帰りますから。」


さすがにここまでしてもらうわけには…
何とか乗り切ろうと言ってみたが


「お?昔は喜んで乗ってきたくせに
俺に気を遣うようになったのか。

管理職甘く見るなよ。
ほら、乗って行け。」

抵抗むなしく難なくタクシーに押し込まれてしまった

部長のお給料が良いのは知ってますけど
私だっていつまでも学生感覚が抜けきらない新入社員じゃないんです

気ぐらい遣いますよ

一人ごちりながら
仕方なく住所を告げた





狭いタクシーの後部座席


さっきまでは感じなかった
部長の整髪料の香りが

お酒を飲んだせいか
彼の汗と混ざって少し強めに感じる


それは
今まで嗅いだどの香水よりも強力な媚薬の様で
私はその香りに惑わされなように必死に窓の外に意識を集中した

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