Rest of my Prince
ある日。
――紫堂櫂が来るよ。
表面上、対立関係にある司狼。
彼は残忍な無邪気さを気に入られ、荏原の腹心となっていた。
何かを含んだように…久々に姿を現して、刹那様に笑いかけた。
"紫堂櫂"
彼が、刹那様にとってどんな意味を持っているのかは判らないけれど、その名を聞いた刹那様の眼は赤く染まる。
殺気のように。
紫堂櫂は刹那様の敵なのか?
原因は何だ?
――荏原から聞いたよ。"せり"、約束守る気かね?
刹那様を――
穏やかに、生きさせたいのに。
"せり"
何か…凄く嫌な予感がして。
…そして――私は独断で動いた。
彼らを、刹那様に会わせてはいけない。
刹那様が苦しむ気がしたから。
刹那様を苦しめる者は私が許さない。
どんな手を使っても、例え…その命奪っても。
全てが、荏原…白皇の計画の一角で、私は直接的ではないにしろ、利用されていたに過ぎないと…判ったのはそれからまもなくのこと。
裏で動いたことは刹那様にばれ、
――いいか、蓮。傷つけるのではなく、彼らを守れ。守ってくれ。
切実な刹那様を、私は今まで見たことがなかった。
彼は、彼らを烈しく拒絶しながら、彼らを見守っていたのだ。
特に――
成長したあの少女を。
――せり…。
ああ、あんな目――
私は今まで見たことがない。