Rest of my Prince

└後編

 煌Side
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カラオケ店から出る、俺達の動きは読まれていたらしい。


追いかけてくるバイクや車。


――パッパラ~。


改造されたクラクションの音が近所迷惑だ。


気配を隠そうとしないその尾行術を思うに、"その道"に精通した相手ではない。


荒削りで勢いで突っ走る…実践経験不足の青臭さが目立ち過ぎる。


「ああ、これが玲の言っていた…"手先"の奴らか」


櫂が鼻でせせら笑う。


"手先"とは、族のことだろう。


こんなコテコテの…時代遅れの素人集団、まだ存在しているんだ。


呆れ返るより、微笑ましくも思えてくるけれど。


「わざとらしくついてこられては、逆に表を歩き辛いな。それが狙いだろうが…際限ないし、丁度そこに公園があるから、煌…ひとまず遊んでやれ」


当然ながら、櫂の顔には怯えの色はない。


俺だって同じだ。


どんな人数増やそうと、所詮は雑魚。敵じゃねえ。


俺らが恐れる"怖い力"というものは、緋狭姉ら五皇の力くらいなもので、それ以外は恐れるに足りねえ。


「……煌。素手で秒殺だ。…殺すなよ?」


超然たる端正な顔が、更に不敵な笑みを浮かべたのを合図に、


「了解」


雪崩のように押し寄せる敵。


色取り取りの髪の色。


鉄パイプ持参の、顔中ピアスをした奴らが奇声を上げてやってくる。


その目の色を見れば、正常ではないことは確かで。


ヤバい薬か何かをやっているのだろうか。


それでも、俺の敵じゃねえ。


俺は前傾姿勢で飛び出し――

思い切り暴れた。


空高く舞い上がる男達。


俺に触れるなんて100年早い。


それが判ったのか、バイク隊が発動する。


縦横無尽に走り回る無数のバイクの動きを見きり、俺は片足だけで…乗ってた男達を次々に地に叩き付ける。


息すら乱れさせてくれねえ、弱い男達。


何だか消化不良で溜息ついた時、一際大きいエンジンの音に振り向けば。


櫂の背後から、櫂目がけてでかい車が爆走してきたのが目に入る。



「櫂、避けろ!!!」

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