Rest of my Prince
「いちいち何を潰したのかなんて覚えちゃいねえよ。何だよ、あの弱っちいヤクザの親元なのか此処。だから皆弱いんだな?」
「まあ…十分強い組織なんだろうけどな。中に入るぞ」
櫂に促されるようにして入った内部は、意外に人が少なくて。
少ない割には慌ただしい。
「あっちもこっちも、何だって言うんだ!!!」
そんな黒服の声を聞き――
「あの物音は…派手にやってるな、玲と桜」
確かに耳を澄ませば、男達の絶叫が聞こえる。
断末魔の叫び。
それに比べれば、俺…即座に意識奪ってるから、優しいよな。
「どっちもどっちだけどな」
そう櫂が呟いたかと思うと、後方に長い足を伸ばして、いつの間にやら銃を構えていた男の鳩尾を…凄まじい速さで…的確に蹴りつけた。
男が銃を手放し後方に吹っ飛びながら、丸く蹲ると同時に、櫂は右手を男の喉下に食い込ませ、
「芹霞は何処だ!!?」
低い威嚇の声と、地を凍らせるような…絶対零度の眼差しを送り込んだ。
「ひえええええ!!?」
「…言わないと、このまま首の骨をへし折る。それとも…お前の銃を口の中にねじ入れて引き金引こうか」
くつくつくつ。
櫂が、最早残忍としか思えねえ、美しい顔で笑った。
俺…確信したんだ。
俺達の中で、一番優しい男って…やっぱり俺だ。
ああ、"漢(オトコ)"になる為には、もっと情け容赦なく、非情にならないと駄目だな。
そう――思った。