Rest of my Prince
 
――――――――――――――――――――――――――――……


「きゃはははは、はいどうぞ、フウセンだよ!!!」




毎日のように、賑わう"遊園地"。


私の姉…旭は、それは毎日嬉しそうに、私達の仕事となっている風船配りをしている。


司狼は…毎日飽きずに遊びまわっていて、刹那様から与えられた風船配りという仕事を放棄しては、私に怒られる。


私達は、刹那様を凌ぐ年齢ではあるが、容姿からは"子供"とさして差はなく、姉も司狼も客と言葉を交わしながら、いつもいつも笑っていて…人気者らしい。


月もここにいたら。


――きゃはははは。


きっと喜ぶだろう。


生きる為とはいえ、旭は苦渋の決断を下した。


刹那様を守る為、刹那様が大切にされている者を守る為、彼女は月を犠牲にした。


罪悪感からか、彼女は数日発狂続けて…月のように振舞った時がある。


それを腹立たしい赤い女と青い男が矯正した。

方法は判らない。


だが、旭を見ている限り…"共存"として落ち着いた。


月と共に、旭は守った。


"彼ら"に仕掛けられた、外部からの…欲に塗れた連中が喜ぶ罠を、懸命に解除していたのだ。


その努力は、"彼ら"には判るまい。


旭が、夜空に浮かぶ"月"のように…闇間で光を放ったことは。


彼女は、同じ"死者"を斬った。



その苦しさは――


赤い女は知っている。



そして――


――せりかちゃん、たすけて。


あの少女も、判るだろうか。



刹那様が愛した少女。


誰もに愛されている少女。



何処か慈愛深く――

何処か惹きつけられる少女。



黒い瞳の吸引力に、私の中に隠れた何かがざわりと呼応する。


闇属性なのかもしれない。


だとすれば。


惹かれるのは、その闇故に。


魅縛される私達もまた、闇の者故に。


しかし彼女の強さは何処までも光属性で。


相反する2つのものを、彼女は併せ持っていて。


だから誰もが彼女を欲しがるのだろう。


救いを求める…罪人のように。


< 11 / 235 >

この作品をシェア

pagetop