Rest of my Prince
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「きゃはははは、はいどうぞ、フウセンだよ!!!」
毎日のように、賑わう"遊園地"。
私の姉…旭は、それは毎日嬉しそうに、私達の仕事となっている風船配りをしている。
司狼は…毎日飽きずに遊びまわっていて、刹那様から与えられた風船配りという仕事を放棄しては、私に怒られる。
私達は、刹那様を凌ぐ年齢ではあるが、容姿からは"子供"とさして差はなく、姉も司狼も客と言葉を交わしながら、いつもいつも笑っていて…人気者らしい。
月もここにいたら。
――きゃはははは。
きっと喜ぶだろう。
生きる為とはいえ、旭は苦渋の決断を下した。
刹那様を守る為、刹那様が大切にされている者を守る為、彼女は月を犠牲にした。
罪悪感からか、彼女は数日発狂続けて…月のように振舞った時がある。
それを腹立たしい赤い女と青い男が矯正した。
方法は判らない。
だが、旭を見ている限り…"共存"として落ち着いた。
月と共に、旭は守った。
"彼ら"に仕掛けられた、外部からの…欲に塗れた連中が喜ぶ罠を、懸命に解除していたのだ。
その努力は、"彼ら"には判るまい。
旭が、夜空に浮かぶ"月"のように…闇間で光を放ったことは。
彼女は、同じ"死者"を斬った。
その苦しさは――
赤い女は知っている。
そして――
――せりかちゃん、たすけて。
あの少女も、判るだろうか。
刹那様が愛した少女。
誰もに愛されている少女。
何処か慈愛深く――
何処か惹きつけられる少女。
黒い瞳の吸引力に、私の中に隠れた何かがざわりと呼応する。
闇属性なのかもしれない。
だとすれば。
惹かれるのは、その闇故に。
魅縛される私達もまた、闇の者故に。
しかし彼女の強さは何処までも光属性で。
相反する2つのものを、彼女は併せ持っていて。
だから誰もが彼女を欲しがるのだろう。
救いを求める…罪人のように。