Rest of my Prince
兎に角まあ…
芹霞さんには異常なく。
単に敵の頭と意気投合していた…ということで。
「……はあ。よかった……」
玲様が安堵の笑みを見せた。
髪を掻き上げる手に、小刻みな震撼を見せた玲様。
額から汗を滴り落として、未だ荒い息を繰り返す櫂様。
脱力しすぎて座り込んだ馬鹿蜜柑。
三者三様だが、危惧しすぎた反動は烈しくて。
「疲れてるねえ。そうだ、皆も爺ちゃんに足裏マッサージして貰えば!!?
ねえ、爺ちゃん。いい!!?」
「おう、芹霞ちゃんの頼みなら断れねえや。
さあ…どんと来い!!!」
「きゃあ、江戸っ子っていい感じ!!!」
「ほほほ。そうかい、そうかい」
しーんと静まり返る部屋の中、芹霞さんと…彼女を誘拐の指示をした張本人の盛り上がった笑い声だけが響き渡り、
「本当に、お前は!!!!」
「いひゃい、いひゃいって!!!」
可愛さ余って憎さ100倍。
そんな様子の櫂様が、容赦なく芹霞さんの頬を両手で引っ張る。
「本当にもう!!!」
そして――
「…無事で良かった…」
櫂様は芹霞さんを抱きしめた。
「本当に…何も無くて良かった…」
後日。
櫂様が買収しようとした件においては、芹霞さんとカラオケ友達となった仁流会会長が、快く櫂様側に寝返ってくれたおかげで、長期戦覚悟の案件が、即時に解決出来たという。
「ふふん。これは…Zodiac様々だよね!!!」
私が棲まわせて貰っている櫂様の家には…
Zodiacという歌手の曲が流れ、ポスターが日々増えた。
「"幻惑の蝶はひらひらと~君の愛を求めて" …ああ、Zodiac最高。見れば見る程格好いい~♪ 曲聞いてるだけで、好き過ぎて…ドキドキしてくるぅ~」
「なあ、櫂。病状悪化のこの結末、おかくね? 絶対おかしくね!!?」
「ふふふ。Zodiac…これが由香ちゃんが警告発した、抱かれたい男のZodiacね…。ふふふ。3人分のフェロモンね…」
「……。…本気で潰してやるかな…」
Fin.