Rest of my Prince
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毎月2回、この人工都市の向こう側から、色とりどりの煩い連中がやってくる。
少し前までは"約束の地(カナン)"と呼ばれ、屍が"生きて"いた混沌とした世界だったが、彼らはそれを"生者"が溢れ返る世界に、一新した。
彼らが来るだけで、人間達も色めき立つ。
無彩色の世界が、強烈な色に塗り替えられる。
その時間になると、必ず刹那様は外に出る。
そして迎えるのだ。
「どうして、いつもお前まで来るのさ紫堂櫂」
漆黒の美貌の少年が現れると、刹那様は本当に嫌そうな顔をする。
「俺はここのスポンサーだ。誰が潰れかけた各務を救ってやってると思ってる」
対してこの少年も、本当に嫌そうな顔で応対する。
2人とも……心底嫌そうだ。
だっから会話しなければいいのに、どうしても何か一言二言言いたいらしい。
「ふん。ハイエナ紫堂だって各務のおかげで肥え太ったくせに、何を偉そうに。誰が此処を改造しろと頼んだよ?」
「嫌なら此処から出るか? 生きていけるのか?」
できやしないだろうといわんばかりの不敵な様に。
この少年、威圧感は半端なく、まさに王者の貫禄の持ち主で。
「芹霞との約束、お前は破るのか?」
刹那様は舌打ちをした。
その瞳は真っ赤だ。
でも思う。
刹那様があの少女と約束をしたことを、破棄する気がないということは…彼は"生き"続ける意思をもったということ。
彼が闇に――密かに隠し続けていた"死"という事実は、今こんな眩い太陽の下で公然とされ、そして紫堂櫂は"神崎芹霞"という名前で、刹那様を"生"に縛る。
それだけは感謝したいと思う。