Rest of my Prince
そんなこんなで眠れぬ日々が続いて、学園祭初日に突入。
「煌…声がハスキーだね。風邪でも引いた?」
心配してくれるのは嬉しいけれど、お前を想い悩んでこんな声になりましたなんて、口に出すこと出来ねえだろ。
少しだけ、櫂の哀れんだ目が向けられる。
櫂は判ってくれているらしい。
きっとお前もこういうのを堪えてきたんだな。
って、いいのか? 櫂を理解者にして。
何とも複雑な関係だよな、俺ら。
桐夏の正門には、達筆な毛筆体で『桐夏・桜華祭』と書かれた横幕が貼られている。
特進科の櫂は、普通科の俺達とは棟を違えるけれど…今日は学園祭だからそこは関係なく。
「10時に玲と桜が此処にくる」
毎年、あの2人は俺達の学校行事にやってくる。
櫂も芹霞も必ずあの2人を呼びたがるし、俺もそれに異存はなく。
いつも裏方にいる2人も、喜んでいる気がする。
ただ――
全員の美貌は迫力ありすぎて。
しかも刺客が騒ぎに乗じてやってくるわで、学校行事が穏やかに終わった試しがなく、学校関係者は俺達が揃うと泣きそうな顔になる。
"賠償"とか"補修"とかは紫堂財閥がしているのに、何心配するんだろう。
俺はいつも判らねえ。
「何か…変じゃない?」
芹霞の声。
「どうして櫂や煌に…女の子が取り巻かないの? というか…女の子達…どうして朝から校舎を駆け回ってるの?」