Rest of my Prince


「どうする? この人混みの中…芹霞を探すか?」


見つかるのかさえ判らないマンモス学校。


そんな時、



「どういうことだよ!!?」


慌てたような男の声がしたと思うと、目の前のドアが開き――


「これが現実。どんなチャンスでもモノにしたいの。じゃあな!!!」


中から、手をひらひらと振る3人の男子生徒が出てきた。


3人とも肩に何かの…ケースを背負っていて。


俺と櫂を見ると、びくっと大げさな反応を寄越して、そそくさと…立ち去った。


「…何だ?」


開けられたドアを、俺が覗き込んでみると…そこは音楽室だったらしく、グランドピアノの椅子に男子生徒が1人座っていて。


項垂れるようにした頭に両手を沿えて…"絶望感"を露わにしていて。


「折角…皆でここまで頑張ってきたのに!!!」


そんな叫び声が聞こえて。


櫂は目を細めて、中に入っていった。



「おい…どうしたんだ?」


櫂の声に顔を上げた男は…やはりびくっと身体を震わせた。


大げさだよな、だけどまあ…櫂には威圧感はあるけどさ。


「え、ああ、はい。これから桐夏でライブをやる予定だったんですけど…Zodiacが飛び入りでライブするらしくて…そのバッキングに誘われたらしくて…行ってしまったんです。彼らはプロ目指しているから…一番下手くそな俺だけを置いて…行ってしまいました。5年も一緒にやってきて…俺達は3年だから…最後のライブだというのに」


Zodiac、かよ。

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