Rest of my Prince
「人がいないし…1人だけでは仕方が無いです。ようやく…5年越しで生徒会にライブ開催の認可を貰ったけれど…Zodiacが来るなら、例え誰か見つけて開催したとしても…誰も見に来てくれないでしょうし」
「Zodiacは絶対来るのか?」
「はい。Zodiacお忍びで…ということですが、マネージャーから生徒会通じてあいつらに連絡があったようです。Zodiacは公にライブすると発表できない理由があったらしくて。だけど元々"不当な権力に屈する気はにない"と笑い飛ばしているとかいないとか」
櫂の端正な顔が、ひくりとひくついた。
「はあ…。すみません、愚痴ばかり。忘れて下さい。
楽しい…桐夏祭を」
そして男は、床に置かれたままのケースのチャックを閉めてそれを担ぐと…櫂に一礼して出て行こうとした。
「待て」
その声に、男は足を止めて振り返る。
「ライブは何時だ?」
「12時30分ですが」
「ということは…あと3時間はないな」
「?」
「お前の担当楽器は何だ?」
「え? ギターと…ドラムを少々」
櫂は腕を組んで考え込んでいた。
そして携帯を取り出した。
「あ、玲か。今桐夏に着いたのか? え、芹霞を見た? 宮原と一緒だったら…まあ放っておくか。あの女はZodiacにはあまり好意的ではないから、芹霞の暴走を抑えられるだろう。玲、遠坂呼び出して、桜と3人で普通科の2階にある第2音楽室に来い。大至急」
何だ?
どうしたんだ?
電話を切った櫂は、俺達に笑った。
「どちらが上かはっきりさせてやる」
その漆黒の瞳は、挑発的な光を湛えて。
どこまでも不敵に、櫂は笑っていた。