Rest of my Prince
「玲様は、世間から取り残されてはいません」
思わず私は断言してしまう。
「いやいや、僕は櫂や煌に比べればまだまだで。個性がないというのか、強さにかけるというのか」
「ご謙遜を。玲様は十分に…」
その時――
目の前を芹霞さんが走りすぎた。
「Zodiac~!!!」
私は――
思わず玲様の横顔を見上げ、その様子を覗った。
「忙しいようだね、芹霞。僕達が居るのが判らないくらい」
にっこり。
…玲様…ご機嫌が…お悪いですか?
そしてその直後。
「Zodiac~!!!」
先刻とは反対方向から、また芹霞さんが走り去った。
「Zodiac~!!!」
それが何回か繰り返され、目の前を芹霞さんが往復して。
「ふふふ。ね? 絶対僕は目立ってないと思うよ?」
にっこり。
…芹霞さん。
玲様はここにいます。
私には気づかなくていいですから、せめて玲様に気づいてあげてください。
玲様のご機嫌が…。
玲様のお顔が…。