Rest of my Prince
「あ、じゃあ…私は芹霞を探してきます!!」
すちゃっという擬音語でも発しそうな敬礼を寄越し、宮原弥生はそそくさとこの場を立ち去った。
彼女は玲様に少なからず気があるのだと思うけれど…一緒に居れぬ程に危険を感じたらしい。
そんな時、玲様の携帯の着メロが鳴る。
この…"ねこふんじゃった"のヘビメタバージョンは、櫂様からだ。
「はい。もう桐夏に着いているけど…ああ芹霞は、弥生ちゃんが追っかけていったよ? え? 放っておく? 由香ちゃんと…第2音楽室、了解」
電話を切った玲様は、神妙な顔をしていた。
「どうなさったので?」
「何だかね、櫂が大至急…由香ちゃんを連れて音楽室に来いって。芹霞じゃなくて由香ちゃんって…一体なんだろうね。大至急…どうしたんだろう?」
首を捻りながら、それでも玲様は遠坂由香の携帯に連絡をし、
「師匠~!!! 案内は任せて!!!」
親指突き出して笑う彼女も、何だか朝から汗まみれ。
「…芹霞を探してたの?」
「そうそう。Zodiacの噂、師匠も聞いたんだね? 神崎、ぶっ飛んで制御不可能状態だから…宮原に後は任せてきた。ダイエットしたがってたから、よかったんじゃないかね、彼女」
「Zodiacって…そんなに魅力ある?」
「さあ? ボクも宮原も全然趣味じゃない。それなら断然師匠の方がお色気ムンムンさ。きっと如月あたりが、嫉妬爆発して神崎を否定しまくったんじゃないか? 意地から入ったファンだから、余程のダメージ食らわせないと、狂信者になるよ」
私にも、Zodiacのよさがまるで判らない。
「Zodiacって、好きな人と嫌いな人の差が烈しくてさ。曲だってウケを探っているようで一貫性ないし。神崎は幅広く挑戦しているって高評価だけど…ボクは何か好意的には思えない。何だろうね、一体。師匠、師匠の色気でガツンと神崎をKOしちゃってよ」
「…それが出来たらね…」
ふっ…と、玲様は天井を振り仰いだ。