Rest of my Prince
 
「だから!!! 左手と右手は同時に別々になんか動かねえんだってば!!! お前無理なことばかり言うなよ!!?」


馬鹿蜜柑が男子生徒に怒鳴っている。


「無理って…。別々にやるのがギターってもんで…君がやりたいという"ギターソロ"は特にそういうもので。"キュイーン"だけがギターじゃないんで」


対する男子生徒は、泣きそうな声を出している。


椅子に座っている馬鹿蜜柑の手の中には…エレキギター。


「櫂……?」


訝しげな声を発した玲様は、ピアノで断続的な音を奏でては…何かを紙に書き込んでいる櫂様を見つめた。


「ああ…玲。お前も手伝ってくれ。やっと1曲出来た処だ。あと5曲分の作曲と作詞と編曲と演奏。リミットは12時30分」


「な、なな何!!!?」


玲様が驚きすぎて仰け反った。


「うぎゃあ!!! 指がつった!!!」


馬鹿蜜柑が潰れ蜜柑になりそうな声を出した。


「あ、あの…櫂様。一体どういうことで?」


私の問いに、櫂様はにやりとした超然とした笑いを見せた。


「ああ。12時30分、桐夏祭でライブを敢行する」


「はあ!?」


玲様が更に驚いたような声を出した。


「どうもこの…男の作詞作曲にはインパクトが無くてな。このままだと、まるでZodiacに太刀打ち出来ん」


「す、すみません…」


胸元に"Ⅲ"と書かれたバッチが見える。


櫂様…彼は先輩なのでは。


「紫堂。Zodiacに…ぶつけるんだ?」


遠坂由香が三日月目をしていた。


< 135 / 235 >

この作品をシェア

pagetop