Rest of my Prince
「ああ。Zodiacがライブをする時間に、わざとぶつける」
それは不敵な笑み。
「そりゃあいいぞ。面白いよ、紫堂!!! で、配役は?」
「後回しだ。曲が出来てからと思って。ま、ボーカルは決まっているがな」
ちらりと視線を送った先は馬鹿蜜柑。
馬鹿蜜柑は、歌が上手いと芹霞さんから聞いたことがある。
ああ、腐った橙色が歌って大丈夫だろうか。
というより、何でギターをやる必要があるのだろうか。
「ギターに飛びついて、話を聞かないんだ。まあ…お前達が来るまで好きなようにと放っていたんだが…」
特性というものをまるで判っていない馬鹿蜜柑は、私達の話など聞いていないらしく、その集中力は凄いかもしれないけれど…ギターの技術はお粗末すぎて。
聞いているだけで、大きいイライラを誘発する音。
これなら子供の方が上手いと思う。
あ、また同じ処を間違えてる。
というより、先刻から同じ処ばかり教わって、どうしてこんな不協和音を奏でられるのかが不思議すぎる。
「絶対、このギターおかしい!!」
ついに楽器のせいにし始めた。
本当に馬鹿過ぎる。
そう大きな溜息をついた時、
「むふふふふふ」
突然笑いだした遠坂由香が、馬鹿蜜柑の横に座り込み、
「はいはい、君はギターは駄目。時間の無駄!!!」
「俺、格好いいギターを演奏するんだ!!!」
橙色は駄々をこねている。
この男…また形から入ったのか。