Rest of my Prince
「ああ、先輩。君の担当は何?」
「…ギターとドラム少々…」
恐らく煌が威嚇して、泣く泣く担当楽器を教えていたのだろうけれど。
「よし、じゃあ先輩はベース決定だ。ギターが出来るなら、ベースも出来るだろう?」
「ははは。やっぱり俺は…最後のライブでギターが出来ないんだ…」
がっくりと男子生徒は項垂れた。
「細かいこと言わない!!! それから!!! 如月は不器用なんだから、マスターするまでに時間がかかりすぎる!! そこでギターは葉山に決定!!」
「わ、私!!?」
「そう。手が器用で要領いい葉山のことだ。飲み込み早いと見た」
わ、私が…エレキギター…。
派手な赤色のギターが、蛍光灯に反射して不気味な光を発している。
自慢ではないが、私は生まれてこの方…楽器などいうものを弾いたことはなく。まあそれは…馬鹿蜜柑も同じだろうけれど。
「あ、俺リコーダーは…」
「楽器のうちに入らんよ、如月!!! キミはドラムとボーカル」
「はあああ!?」
「君のような体力馬鹿にはもってこいの楽器だ。その動物的本能には、後天的技術より先天的才能がお似合いだ。リズムに合わせてボボンがボン。神崎家でやったろう、『太鼓の達人』。あんなものさ。ほうら、君にも簡単だ。もう頭使ってイライラしなくてもいいんだぞ? お買い得だと思わないか?」
そ、そんなものなのだろうか。
馬鹿蜜柑にはそんなものだったらしく、言葉に詰まり暫し考え込んだ。
「だ、だけど…ボーカルもなんて。俺歌下手くそだし、こんなのが歌ったら皆どん引きだぞ!!?」
「そう思ってるのは君だけだろうよ。でも大丈夫。ボーカルはツインだ。まずは君と紫堂」