Rest of my Prince


櫂様がびくんと反応して、遠坂由香を見た。


「俺……?」


少しばかり…顔色がお悪いような。


「待て待て待て!!! 櫂は音痴なんだぞ?」


馬鹿蜜柑が騒いだ。


「ありえないだろう、な~紫堂。完璧主義を信条にしている君が、"歌えません"なんてありえないよなッッ!!?」


櫂様は苦虫を噛み潰した顔で、押し黙った。


「玲様…櫂様は本当に…?」


私はぼそぼそと玲様の耳元に囁いて聞いてみた。


「さあ。今まで僕は櫂の歌声というものは聞いたこと無いから…」


玲様でも知らないという櫂様の歌。


「櫂の人気落ちるじゃねーかよ!!!」


「そこが"萌え"になってしまえるのが、オトメの不思議な処さ。君は本当にオトメゴコロに疎いよね?」


櫂様は…どうする気だろう。


凄く…項垂れて考え込んでいる。


「むふふふふ。紫堂~、ボクを呼んだということは…女の子のウケを狙う知恵を貸せということだろ? 大丈夫、ボーカルは君だけじゃないから。ね、師匠~?」


「ぼ、僕も!!?」


「葉山もね」


「わ、私まで!?」
< 138 / 235 >

この作品をシェア

pagetop