Rest of my Prince
├中編その2
玲Side
**************
とにかく僕は、余裕がない。
Zodiacという存在に、"おでかけ"に馳せた夢も砕かれたような心地。
突然出てきた奴に芹霞を掻っ攫われそうな不安を感じるのは、…いや、感じたのは、久遠に対してだけで終わりにしたい。
完全過去形にして、未来永劫そんな不安と無縁に生きたい。
そんな僕に気付かずして、
――玲くん、Zodiacって格好いいよね~。
この処、話題はそればかり。
ただの芸能人に対する可愛い"憧れ"ならばまだいいけれど、芹霞の夢中度は病的なものにまでなってきて。
櫂ですら紫堂の力を使う羽目になった。
少し前は僕の"おでかけ"ばかり口にしていたのに。
いつ"おでかけ"しようとか、何処に行こうとか…今後の展開も踏まえて、僕は本当にイロイロ考えていたのに。
芹霞から赦された、僕だけの特権の行使を大事にしていたのに。
――きゃあああ!! Zodiac!!!
もし過去に巻き戻しできるなら、浮かれていたあの時の僕に教えて上げたいよ。
伏兵の存在を。
時々――
誰も居ない時、家の壁に貼られたポスターの前に立ち、憎々しげにその3人の顔を眺めている。
整ってはいるだろうけれど、所詮凡の域を出ぬ顔だち。
音程を外していないだけの、頼りない歌唱力。
芹霞が言う程の"良さ"を全く感じられない僕は、ただ忌々しいだけ。
剥がしても貼られるポスターならばと、僕はこっそり油性マジックで、各人の顔に犬のようなヒゲを左右3本ずつ書いて、鬱憤を少しだけ晴らしたけれど。
――何このヒゲ!!? 煌でしょ!!? 絶交!!!
犬繋がりで犯人に仕立てられた煌は、僕と桜を見たけれど。
――桜ちゃんはそんな子じゃないし、優しい玲くんがそんな子供じみたことするはずないでしょうッッ!?
悪い、煌。
僕はとにかく、余裕がないんだ。
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とにかく僕は、余裕がない。
Zodiacという存在に、"おでかけ"に馳せた夢も砕かれたような心地。
突然出てきた奴に芹霞を掻っ攫われそうな不安を感じるのは、…いや、感じたのは、久遠に対してだけで終わりにしたい。
完全過去形にして、未来永劫そんな不安と無縁に生きたい。
そんな僕に気付かずして、
――玲くん、Zodiacって格好いいよね~。
この処、話題はそればかり。
ただの芸能人に対する可愛い"憧れ"ならばまだいいけれど、芹霞の夢中度は病的なものにまでなってきて。
櫂ですら紫堂の力を使う羽目になった。
少し前は僕の"おでかけ"ばかり口にしていたのに。
いつ"おでかけ"しようとか、何処に行こうとか…今後の展開も踏まえて、僕は本当にイロイロ考えていたのに。
芹霞から赦された、僕だけの特権の行使を大事にしていたのに。
――きゃあああ!! Zodiac!!!
もし過去に巻き戻しできるなら、浮かれていたあの時の僕に教えて上げたいよ。
伏兵の存在を。
時々――
誰も居ない時、家の壁に貼られたポスターの前に立ち、憎々しげにその3人の顔を眺めている。
整ってはいるだろうけれど、所詮凡の域を出ぬ顔だち。
音程を外していないだけの、頼りない歌唱力。
芹霞が言う程の"良さ"を全く感じられない僕は、ただ忌々しいだけ。
剥がしても貼られるポスターならばと、僕はこっそり油性マジックで、各人の顔に犬のようなヒゲを左右3本ずつ書いて、鬱憤を少しだけ晴らしたけれど。
――何このヒゲ!!? 煌でしょ!!? 絶交!!!
犬繋がりで犯人に仕立てられた煌は、僕と桜を見たけれど。
――桜ちゃんはそんな子じゃないし、優しい玲くんがそんな子供じみたことするはずないでしょうッッ!?
悪い、煌。
僕はとにかく、余裕がないんだ。