Rest of my Prince
 

そして彼はげっそりとしてブースから出てきて、


「ヤバヤバ・・・っす…」


今度は櫂のブースへ。


覘く間でもなく。


即座にブースから出てきた少年は、死人のようなやつれた顔で。


「もう…好き勝手やって下さいっていう感じ…。何なんでしょう、この人達。初めてなんて嘘ですよね。神ですね、ホント。ヤバいのは、やはり俺だけです」


そう…彼に割り当てられたブースに入っていこうとしたから、


「え? 僕のは見てくれないの?」


「全ての楽器を生録りし、古いシンセ1台であれだけ曲をリミックスし直すことが出来て、その上で俺が何を教えれると???」


「え、でも…皆の見よう見真似で。ただ音だけを録っただけのものだから…」


「いいです、もうそれで全然いいです…。5年バンド演奏していた俺、それ以下です…」


いいのかな…。


僕はクラシック以外の楽器の使い方はよく判らないのに。


彼は落ち込みながら、ブースに入ってしまった。


そんな時、由香ちゃんがやって来た。


「ふうふう…。あ、師匠!!! 宮原も呼び出して手伝って貰うことにしたよ。むふふふ、お色気には宮原の力も必要さ。…神崎? ああ、空いてるブースに閉じ込めてZodiacの曲流してるから、暫くあの中で大人しくしているはずさ。まるで猛獣だよね、ははは」


そして由香ちゃんはより一層三日月形の目をしながら、


「ももっちはOKさ。泣いて奴隷になったよ。あいつはマゾだ。どんなプレイでもイケるらしいから、適当なトコロでも大事なトコロにでも、遠慮なく突っ込んでヒイヒイいわせて構わないからね?」


由香ちゃんは何をしたのだろう。


というより…言い方、わざと?


「衣装よし、小道具よし、楽器の手配よし…ってこれは紫堂財閥のおかげだけど。照明もOK」


「照明さんまで用意したんだ?」


「むふふふふ~。プロを用意したからね。君達のイイトコロに光をあててくれるよ」


何か微妙な言い方だけれど。


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