Rest of my Prince
「師匠~ストレス発散兼ねて、女子を悩殺してね~。あ、全般じゃなく、神崎限定か」
「ははは。してくれるのかな」
「出来たら、Zodiac超えたってことで」
「……頑張る」
僕の顔は、きっと真剣になっていただろう。
「師匠此処で何してるのさ。もうやること終わっちゃったの?」
「いや…これから編曲さ。皆が気になってね。はあ…編曲、櫂の注文が多くて、どれだけそれを実現出来て、どれだけZodiacを"拡げられる"か判らないけれどね」
「紫堂は、やれないことは師匠に頼まないよ? むふふふ。歌詞変え担当は紫堂だったよね。言葉責めかあ、紫堂もやる気だね。そういうトコ、クールかとも思ったけれど…中々にノリいいね、彼」
「ああ、ある意味芹霞と同類で、これと決めたらとことん突っ走るけれど、興味なければ振り向きもしない」
僕は苦笑する。
「師匠だって似たようなもんでしょ。神崎にぞっこんで、それ以外はどうでもいい。まあ…如月も一緒か」
由香ちゃんの目は三日月形で。
それをふと、窓の外に向けた。
「あれ、師匠。お空が怪しくなってきたね。中庭のライブなのに…、雨降りそうだな。機材濡れたら…」
「櫂がいるし」
「ああ、風で弾き飛ばすのか。しかし…機材がショートしたら…」
「僕がいるし」
「そうだね~。心配して損しちゃったよ、ボク。嵐でも何でも来いって感じだよね。ちなみにZodiacは、講堂だから。桐夏の中で一番設備のいいトコロ」
「ふうん? ますます腹立たしいね。元々桐夏の3年のライブだけだったのに、裏から手を回していい場所抑えるなんてさ。馬鹿にされているよね?」
「し、師匠~、お、抑えて?」
「ふふふ。久々にイロイロ燃えるなあ…。どう料理してやろうかな…?」
僕は手の指の骨をぼきぼき鳴らした。