Rest of my Prince

「待て待て待て!!! いやその前に!!! 同じ女として、その口からはみ出た尻尾に異議申し立てる!!!」


弥生があたしの手を引き、更に人差し指突きつけて文句をつけた。


「むごごご。ごっくん。は、早く行かなきゃ、いい席とられちゃう!!!」


必死だ。


鯛焼きを丸呑みしたあたしは、必死だ。


会いたくて溜まらない人達に会えるのなら、より近くで触りまくりたい。


一般常識としてはいただけないかも知れないが、一般のファン心理を汲み取ってもらいたい。



そんな時だ。



ピンポンパンポ~ン。



再び校内放送の音。



『え~…あ? なあ玲、もうこれ、繋がってるの?』



それは聞き覚えある…



「煌!!?」



『ふうん、お前は便利だな。

…ええと、2年の如月煌。今生徒会からZodiacのライブ告知があったけど・・・Zodiacの…Zodiac……Zodiacッッ!!! ざけんなよ、ちくしょう!!!』


きーんと耳にくる怒声に、思わず両耳を押さえて蹲(うずくま)る。


『…校内に広がる蜜柑の馬鹿さかな』


ぼそりと聞こえるのは…桜ちゃん、俳句?


『貸せ』


深みある玲瓏な声が割り込んだ。


『特進科2年の紫堂櫂だ。今から中庭でライブを行う。以上』


見事な素っ気無さだけれど、それより櫂は…何て言った?


ライブ!!?


「な、なななして!!?」


弥生はにやにやして、立ち上がったまま固まるあたしの反応を見ていて。


「同じ時間だね、芹霞~。どうしちゃう~?」


辺りを見ると殆どの女子がうろたえている。


見に行くべきは――

Zodiacか。

桐夏のプリンスか。
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