Rest of my Prince
『ほら、櫂…僕に貸して。ええと…より多くの方々に見て貰いたいですので、お時間ありましたら…どうかお越し下さい。曲は…』
そんな時、放送から何かがカチカチと音がして。
『3・2・1…』
誰かの男声に合わせて、突然烈しいドラムが始まって。
『"視線"』
「こ、これ…Zodiac!!?」
あたしが間違えるはずはない。
何を――
考えているんだ、あいつらは~!!!
放送室からの校内放送ではない。
玲くんが紫堂の力を使って、"現場"リポートしたに違いない。
本家本元に戦いを挑むなど、何を無謀な!!!
中庭はすぐそこだ。
一言物申してやる!!!
あたしは弥生と走る。
激しいリズム隊に絡みつくように、途切れることなく早く奏でられるピアノの音が聞こえる。
え、Zodiacのこの曲って、ピアノ混ざってた?
この速さといい、ジャズめいたリズムといい…きっと打ち込みなんだろうけれど。
ピアノの旋律がとてもいい。
混ざるだけで、重い曲が流麗な…別曲に聞こえてくる。
ああ…残念。原曲でこういうアレンジをしていたら、もっともっとファンが増えただろうに。
そう思いながら行き着いた中庭には、本当にお粗末過ぎる仮設ステージが出来ていて。
「きゃああああ~!!!」
割れるような女子の歓声。