Rest of my Prince
見れば――…
桜ちゃんが…真っ赤なエレキギターを弾いていて。
いつものゴスロリ調の服ではなく、甘さは一切排除した…ロングライダースとでもいうべき裾の長い黒ジャケット。大きな襟には鎖が装飾として垂れ下がり、高い位置でのベルトが桜ちゃんの華奢な腰を絞っている。
背部のレースと編み上げはゴステイストで、ワイルドの中にエレガントさを漂わせるダブルライダース。下は黒いレースがあしらわれたミニスカートにニーハイブーツ。
完全…バンク系の衣装だ。
桜ちゃんは…まあ判る。
いつも黒だし、無表情でクールだし。
「!!?」
反対側で、グランドピアノを弾いているのは玲くんで。
赤いイヤリングをぶら下げた玲くんは、ピアノを狂ったように弾きまくる。
打ち込みじゃなく…玲くん"生"だったんだ…。
いやいや突っ込み処は其処じゃなくて、玲くんも桜ちゃんとお揃いの衣装を着ていたことで。…まあ下は流石にパンツだけれど、あまりにもインパクトありすぎた。
こんな服でも着こなす彼の美貌は流石なんだけれども…だからだろうか。
ダークに染まった玲くんが、グランドピアノを弾いている。
何だか…無性にどきどきしてくるのは何故だろう。
「ああ~ああいう悪魔なら、堕ちてもいい…」
弥生が蕩けた顔で身悶えた。
そんな時、脇からやたら目立つボーカリストがやってきた。
中央にある2つのスタンドで、もしやとは思っていたけれど。
やはり――
裾の長いゴシック調のパンク衣装は変わらずに、黒過ぎるから余計に目立つ橙色。
あらゆる意味で圧倒され、その強烈すぎる美貌にあたしは思わず1歩退いた。
「如月くん、元がいいから…しかも強面だからこんなワイルド系が似合うわ~。ガタイもいいから…うわ…、ヤバい。如月くん、かなりイイかも…」
弥生の反応はともかく、これで卑屈になるというなら、奴の美意識は崩壊している。
いつにまして不機嫌そうな顔は、首についている…広幅の赤革チョーカー故か。
どんなに着飾っても、あれは赤い…犬の首輪にしか見えない。
ビジュアル系のワンコだ。
そして今度は反対側から櫂が出てきた。