Rest of my Prince
そしてピアノソロ。
「私あの人に、激しく弾かれたい~」
玲くん…。
プロだよ、絶対プロ。
嬉しそうに桜ちゃんとソロの掛け合いを始めた。
それに櫂と煌とが、"ラ行"の歌で絡めて。
顔を見合わせて1つの歌を作り上げる彼らは、本当に楽しそうで。
その場に、あたしがいないことが寂しく思った。
盛り上がったままで、その曲を終えて…彼らは一礼すると舞台裏に消える。
そして、由香ちゃんが金色のマイクを持って壇上に現れた。
あの光り輝く純金マイク…仁流会会長である爺ちゃんから借りたものだろう。
「皆様こんにちは~、只今は"魔王とデビルワンコの仲間達"でした。はい~拍手~。ではでは次は、"お色気カズン"。夢の国に誘って貰いましょう、どうぞ~」
由香ちゃんが手を差し伸べると、暗くなった。
ミディアムテンポの切なげなメロディが流れてくる。
演奏者は…あたしが知らぬ人で。人数以上の音が聞こえるのは、これこそ"打ち込み"何だろう。玲くんがいればお手の物だ。
「!!?」
その時、突然照明があてられて。
光を浴びたのは1人の男。
黒いサテンシャツに黒革のスリムパンツ。
彼の"カラー"をまとった闇の使者。
胸ボタンは殆どしておらず、シルバーの大きな十字架が胸元にきらり。
さらさらの漆黒の髪は、掻き揚げた直後のように後ろに流していて。
危ない色気。
まるで――裏世界の住人だ。
次から次へと…あんた、何やってんの?
唖然としているあたしを見つけたのか、にやりと櫂は笑い…マイクを持った。
「"愛してる"」
深みある玲瓏な声音からその歌詞が漏れた時、あたしはその漆黒の瞳に縛られて。
「"永遠に誓うよ"」
何だ、静まれ心臓。
たかが歌詞じゃないか。
だけど無碍にも出来ぬ切実さが流れているようで。
真っ直ぐあたしに向けられているよな…錯覚。
漆黒の瞳に――
魅入られていく。