Rest of my Prince
周囲からばたばたと倒れる音がする。
お色気カズンにやられたらしい。
照明が忙しく動く。
確信犯的な…彼らのイイ表情で、ぴたりと止まる。
その照明のおかげで、更に彼らが艶かしく官能的だ。
凄いな、照明さんきっとプロだ。
「"お前を離さない。AH~"」
櫂が挑むような目を見せて、更にはシャウトまで。
ばたり。
「"堕ちてよ、どこまでも"」
玲くんが切なげな表情を見せて、手を伸ばせば。
ばたり。
次々に倒れる女子お構いなしに、2人の美声で奏でる歌は続く。
アダルトだ。アダルト過ぎて…お子様の頭はぐらぐらする。
「せ、芹霞…。私…"腐"に転向してもいいかな?」
「転校!!? ずっと桐夏に居てよ!!! フ高校って何処よ?」
それから弥生は口を利いてくれなくなった。
間奏に入った時、玲くんが顔を傾けて櫂の耳元で何かを囁いた。
途端、櫂の顔が弛む。
それが見る角度によれば、耳ちゅうに見えるらしく。
それだけで大歓声。
だけど玲くんは確かに何かを企んで、櫂はそれに応じる気らしい。
何だ、今度は何をやらかす!!?
気分は、授業参観に来ている親のもの。
はらはら、どきどき…。
やがて2人の美声のハモりは、切ない声音となり…
何故か…観客完全無視して2人で見つめあう。