Rest of my Prince
 


「"溺れていたい~お前だけに。それは背徳の調べ~"」


そして2人は。


観客側の…互いの手の指をイヤらしく絡め合わせながら、熱く潤んだ眼差しを交差させて。


それだけで彼らの持つ色気が波動状に膨張し、もう完全に世界はピンク色。


この…雰囲気は何となく。だけどまさか…この2人。


耽美。


倒錯。



思わずごっくんと唾を飲み込み、2人の動きを追いかける。


手に汗握る…妙な興奮状態。

何故かハアハア息が荒くなる。


それはあたしだけじゃないだろう。



そして2人は静かに目を閉じて――



「"愛してる"」



美麗な顔を互いに傾かせた。



「ぎゃああああ!!」



大歓声の中、顔は近づいていき――



唇が重なるその瞬間。



「いやあああああ!!!」



照明が消え――



曲が終わった。



ガクン。



「芹霞!!?」


弥生が心配そうに、しゃがみ込んだあたしに手を延べた。


「こ、腰にきた…」


生まれたての子牛のように、がくがくした足は身体を支えきれず、


遂にはすってーんと後ろに転がってしまった。



ううう。


お色気カズン。



恐るべし。
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