Rest of my Prince
歌を歌わない間は、楽器演奏。
煌が激しいドラムを叩き、櫂がバイオリンを弾き。
桜ちゃんがサックス吹いたり、玲くんがコントラバスでベースをしたり。
それはもう混沌(カオス)の世界のような慌しさだったけれど。
気づけば観客は膨れ上がり、あたしの頭の中からZodiacなどは消えうせた。
あまりに櫂達の衝撃的なお色気にやられて、他なんかどうでもよくなってしまって。
歌い手としてだけではなく。
櫂達が歌う方が、あたしは断然好きで。
Zodiacの曲や歌唱力が、如何に薄っぺらいものかを理解した。
素人に此処までの曲が作れるのは、櫂達が凄すぎるのか。
それとも弄られ処の多いZodiacが、下手すぎたのか。
今までの熱は何だったのかと思う程、あたしの中からZodiacに対する興味がすっと引いていく。
それはあたしだけではなかったみたいで。
櫂達のライブが終わっても、誰1人としてZodiacと叫ぶ女子はいなかった。
聞くところによれば、Zodiacのライブは次々に観客を減らし、最後には閑古鳥で…体調不良を理由にすぐ切り上げて帰ってしまったらしい。
多くのマスコミが呼ばれていたみたいだけれど、嘲笑三昧で引き上げたらしい。明日の朝刊はどう書かれているのだろう。
そんなZodiacの様子を聞いた櫂達は、嬉しそうで。
本当に満足げで。
してやったりとしいう顔で。
それに対して、詰る気分さえもう無くなってしまったあたし。
冷たいかも知れないけど、どうでもいい。
Zodiacなんて――
今となっては、夢の中の出来事だ。