Rest of my Prince


「なあ…櫂。お前折角、作詞作曲したの…披露しなかったよな」


煌がチョコバナナを食べながら、そう言った。


「折角なら、やればよかったのにさ」


「ああ、あれは…」


櫂はにやりと笑って、あたしの耳元で囁いた。



「いつか――

お前にだけに聞かせてやるから」



それは艶然とした笑いで。



あたしは思わず咽(むせ)て、咳き込んでしまった。


「ねえ、そういえば師匠。紫堂とちゅうしたの?」


由香ちゃんが興味津々と聞いた。


「どうだろうね。芹霞、君はどう思う?」


妖しげに揺らめく鳶色の瞳がこっちを向いた。


思わずその唇に目が行き――


「玲~!!! 芹霞に鼻血吹かせるな!!!」


「…って介抱するフリして、触るんじゃないよ?」


「フリじゃねえって!!! 殺気を抑えろ!!!」


「凄い人達だよね…」


弥生がぼそっと呟いた。


「多芸すぎる」


すると由香ちゃんが笑い出した。


「多芸なのは、あの人方もそうさ」


あたしは誰かは判らなかったけれど、あたしを除く全員が頷いた。


「凄いプロだったろ、照明係。どんな角度からも、ぴたっとイイ顔を逃さない。さすがに、赤ランプと青ランプがいいと言われた時には、ストリップじゃないからって我慢して貰ったけれど」


「…にやにやして凄い"カンペ"出してくるよね。櫂と歌った時なんて、2人で拳突き上げながら、"どっちが攻でもいいから、とりあえず押し倒してハアハア喘ぎまくれ"」


「ああ…、桜との時は、"後ろから抱き締めて、痴漢さながら…桜のスカートを少しずつ持ち上げろ"だったな」


「俺の時は一言。"全裸になって暴れろ"。出来るかっつーの!!」


凄い照明さんだ。


まるで緋狭姉のようだ。



「ねえ――

何かまたやりたいね、皆で」


玲くんが微笑んだ。


「今度は芹霞も入れてさ」


呼応した煌がにっと笑った。


桜ちゃんの目がくりくりしている。


「そうだな。全員で…楽しもうか」



何処までも楽しそうに…櫂も笑った。





Fin.
< 161 / 235 >

この作品をシェア

pagetop