Rest of my Prince
「なあ…櫂。お前折角、作詞作曲したの…披露しなかったよな」
煌がチョコバナナを食べながら、そう言った。
「折角なら、やればよかったのにさ」
「ああ、あれは…」
櫂はにやりと笑って、あたしの耳元で囁いた。
「いつか――
お前にだけに聞かせてやるから」
それは艶然とした笑いで。
あたしは思わず咽(むせ)て、咳き込んでしまった。
「ねえ、そういえば師匠。紫堂とちゅうしたの?」
由香ちゃんが興味津々と聞いた。
「どうだろうね。芹霞、君はどう思う?」
妖しげに揺らめく鳶色の瞳がこっちを向いた。
思わずその唇に目が行き――
「玲~!!! 芹霞に鼻血吹かせるな!!!」
「…って介抱するフリして、触るんじゃないよ?」
「フリじゃねえって!!! 殺気を抑えろ!!!」
「凄い人達だよね…」
弥生がぼそっと呟いた。
「多芸すぎる」
すると由香ちゃんが笑い出した。
「多芸なのは、あの人方もそうさ」
あたしは誰かは判らなかったけれど、あたしを除く全員が頷いた。
「凄いプロだったろ、照明係。どんな角度からも、ぴたっとイイ顔を逃さない。さすがに、赤ランプと青ランプがいいと言われた時には、ストリップじゃないからって我慢して貰ったけれど」
「…にやにやして凄い"カンペ"出してくるよね。櫂と歌った時なんて、2人で拳突き上げながら、"どっちが攻でもいいから、とりあえず押し倒してハアハア喘ぎまくれ"」
「ああ…、桜との時は、"後ろから抱き締めて、痴漢さながら…桜のスカートを少しずつ持ち上げろ"だったな」
「俺の時は一言。"全裸になって暴れろ"。出来るかっつーの!!」
凄い照明さんだ。
まるで緋狭姉のようだ。
「ねえ――
何かまたやりたいね、皆で」
玲くんが微笑んだ。
「今度は芹霞も入れてさ」
呼応した煌がにっと笑った。
桜ちゃんの目がくりくりしている。
「そうだな。全員で…楽しもうか」
何処までも楽しそうに…櫂も笑った。
Fin.