Rest of my Prince
「芹霞、一緒に観覧車乗ろうか」
紫堂玲も食えない男だ。
女装すれば美女。男装していれば…紫堂櫂とはまた違った意味での"夢の王子様"。
こいつも女ウケしそうなのに、せりに…報われぬ想いを抱いているらしい。
一度は公然と"恋人"となり、現実的な優位性があるはずなのに…その関係に持ち込めない男。
まあ…嫉妬深い男達が傍に控える限り、簡単なことではないだろうけど。
優しげな微笑みと確信的な色気でせりを惹きつけるけれど、こいつが時折見せるえげつなさは相当なものだ。
頭の回転も速く、強さもあり…余裕ぶって紫堂櫂の参謀役を務めているけれど、せりに対しては余裕がなく。
裏表のある…二面性を抱えた複雑な男。
にこやかさはただの隠れ蓑。
この男が剥きだしの本性を見せた時、どれ程の潜在能力を見せるのか。
理性が崩壊した時の豹変ぶり…それはとても興味深い。
そして――
この男の忠誠心。
それは驚嘆に価する。
紫堂玲が、"断罪の処刑人"時のオレを迎えにきた時、
――では、その命オレに捧げるか?
この男…黙ってオレの前で首を向けたんだ。
――必ず、櫂を助けて欲しい。櫂がお前が必要だというのなら、僕は何としてもお前を連れねばならない。あいつが僕を信じている限り。
大鎌で背中を深く抉っても、声1つ漏らさなかった紫堂玲。
そうした駆け引きを一切表に出さず、ずっと痛みに耐え忍んでいた。
紫堂櫂を信じるが故に。