Rest of my Prince
 
そう…その頃から俺は貪欲だったのかもしれない。


現状に満足出来なかったのだろう。


ただの"好き"ではいたくない、と。


もっともっと我武者羅に。

もっともっと烈しく。


当然俺と芹霞の心は重なっていると思っていた。


そこにはズレなど、何も無いのだと。


それが今や――。


「どうしたの、櫂。随分疲れてるね?」


誰のせいだと言いたいけれど、慣れ過ぎて今は溜息しか出て来ない。


こんな長期化するはずではなかったのに。


思い通りにならない現状がもどかしい。


此の世から俺以外の男が全て消えてくれれば、芹霞は俺のものになるのだろうか。


俺だけを、"男"として求めてくれるのだろうか。


確信が持てないのがまた、やるせなくて。


結局は全て、俺の力不足なんだ。


――坊、試練を耐えられるか?


緋狭さんは、何度も俺にそう訊いた。


耐えることで芹霞が手に入るならばと、頷く以外の方法は頭になく。


過去を思い返せば。


何処までが"試練"なのかがよく判らない。


試練だと思って幾度も乗り越えてきたものは、更に難関が待ち構えていて。


その度に俺の心は苦しんだけれど。


ああ――

それでも俺は芹霞が欲しいんだ。



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