Rest of my Prince
 

「緋狭姉は、加減を知らないからね…」


イロイロ思い出している俺の横で、芹霞がぼやいた。


「普通っていうもんがない。だから…本当に中学の時の三者面談…あたし悩んでいたんだよ。緋狭姉を保護者として先生にも友達にも見せたくなくて」


紅皇職に復活した今でこそ、身なりはきちんとしているけれど…失業中の頃は、いつの時代だと思うくらいの…乱れきった襦袢姿。


そんな姿で一升瓶片手に、ふらふらと外をほっつき歩ける強者は、世界中探したって…緋狭姉しか居ねえだろう。


どんな男も返り討ち出来るくらいの強さがねえと、今のご時世…安穏かつあんな勝手気ままに生きれねえ。


「ふふふ、思い出すね、芹霞。当日まで面談があることを緋狭さんに言い出せなくて…携帯で僕に泣きついてきたんだっけ」


「そうそう。今思えば…高校生の玲くんに言うのも何だったけどね。玲くん背広姿で駆け付けてきてくれたよね」


「僕を思い出してくれて嬉しかったよ?」


あれ程人前に出ることを避けていた玲が、しかも背広なんて…次期当主たる櫂に被りたくないと敬遠していた玲が、たかが三者面談如き…慌ててそんな姿で駆け付けるなんて、おかしいとは思ったんだけどよ。


きっと…その頃にはもう、芹霞が好きだったんだろう。


例え芹霞が玲を"お母さん"のように慕っていた故に白羽の矢をたてたとしても、櫂ではなく、玲に頼ったそのことが…玲は嬉しかったんだろう。


横に居る櫂は…なんとも苦々しい顔をしている。

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