Rest of my Prince

「穏やかに三者面談が過ぎていた最中…堂々と遅刻して来るんだものね、緋狭姉」


「ははは。本当、あの時は面食らったね。いつもの襦袢姿ではなく…きっちりと髪をアップに結い上げた、友禅の着物姿で現れたから」


「先生も驚いていたよね。まるで極妻。物言いはそのままだったけど…あたしと玲くんは口開けて固まってたっけ。いつ三者面談の日時を知ったのか判らないけれど、とりあえず人前に出れる格好できるのであれば、事前に教えていて欲しかったよ。あたしの悩んだ時間を返せっていう感じ」


――と、俺芹霞からは聞いていたから。


当然次の日の俺の面談日も、そういう格好で来てくれると思っていて。


俺達の気持ち汲み取った行動をしてくれるのを嬉しく思って。



「あははは、あたし、あの時の煌の顔が忘れられないよ!!! あははは」


それが芹霞限定の"余所行き用"だとは思っていなくて。


現れた緋狭姉は――

いつも通りの襦袢姿に一升瓶。


豪快に笑いながら、現れた。


少しくらい…俺の時も、頑張ってくれてもいいんじゃね?


俺は涙目で机に突っ伏した。


――き、昨日のお姉様で?


芹霞と同じ担任は…驚きすぎて失神寸前。


そして、担任から俺の成績の悪さを聞いた緋狭姉は、


――こいつに、犬以上の知恵などあるわけがない。


――その絶望的な頭の悪さでは、クズ高校に金を積んでも無理だ。これ以上の中学通学も意味がないから、やめてしまえ。


――お、お姉様…そこまではちょっと…。


――教師ならはっきり言えばいい。この駄犬、お前は雌犬の尻を追っかけていた方がお似合いだ、とな。


カッチーン。



――櫂!!! 緋狭姉に馬鹿にされたままだったら俺の男がすたる!!! 何が何でも高校に合格したいから、勉強教えろ!!!


勉強嫌いな俺の申し出に…櫂は愉快そうに笑った。


――全ては…緋狭さんの思惑通り、か。



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