Rest of my Prince
「なあ…お前さ、女いなくなって…困らね? ま、お前なら相当な数の女、引っ掛けることは出来るだろうけどよ。でも今まで1日13人だろ?」
すすすと隣に擦り寄ってきたのは、何とも目に鮮やかな橙色。
「別に困らないね。もう十分だよ、オレは。今までだって、別に好きで抱いていたわけじゃないし」
アイスクリームを舐めながら、何か懐いてくる。
まるで犬のように。
「どれくらい前からよ?」
「5.6年は確実」
「5年として、365日×5は1805。約2000と考えて、1日13人だから13をかけて…26000!?」
ぼたり。
地面にアイスクリームが落ちた。
「最低ラインだね。というかさ、お前…年齢計算も出来ないのに、どうしてそんな計算は速いんだ?」
「万単位こなさないと、"あの域"に行きつかねえの!?」
駄目だ、聞いちゃいない。
この男も個性が強すぎて、頭が痛くなってくる。
如月煌は、理屈ではなく本能で、直感的に物事を捉える男なのだろう。
その感情表現はストレートで、こちらの垣根を壊して突き進んでくる。
そこには打算などなく。
彼もまた紫堂櫂を崇拝している。
主として、友として。
どんな感情を発露させても、紫堂櫂を見捨てることはない。
せりを好きなくせに。
好きで仕方がないという顔をしているくせに。
同様に、紫堂櫂も好きらしい。
彼自身、脇役に回っていると思っているフシはあるが、そんなことはない。
きちんと場の中心に居て、光彩を放っている。
紫堂櫂とも紫堂玲とも違う、"男"の野生を魅せる外貌。
しかし懐けば、ただの犬。
本能の赴くまま…やることはやっているくせに、純情そうに見えてしまうのはなぜなのか。
何処か許してしまえるのは、こいつの性分なのか。
強烈な色彩を放つ彼は、誰からも頼りにされている。
主たる紫堂櫂も…せりさえも。
判っていないのは――
やれば出来ることすら、気づかない…
残念過ぎる本人だけ。