Rest of my Prince

浅ましい僕は…

どうしても芹霞を手に入れたくて。


緋狭さんは、そんな僕を見て――

嬉しそうに笑うんだ。


――いい男の面になった。


昔のような…困ったような顔ではなく、酷く満足げな顔で。



ふと…思うんだ。


緋狭さんは、紫堂に押し潰されそうになっていた僕を…芹霞を使って助けようとしていたのではなかったのかと。


別に僕は、真情を緋狭さんに吐露していたわけではない。


煌の様に特別に目をかけられて怒られることもなく、

ただ流れる水の如く…彼女と相対していただけ。


僕の顔から笑みは消えていたことはなかったはずなのに、それ故に彼女が心を痛めていたと知ったのはつい最近。


――諦めるな、玲。


幾度ともなく向けられたその言葉の意味に、彼女のどんな思いが込められているのか、当時の僕は何1つ読み取ることが出来なかった。


――諦めるな。



次期当主という身分を剥奪され、緋狭さんは僕から櫂の教育係になったけれど、それでも彼女との縁は未だ続いている。


流されてばかりいた僕の過去を、誰よりもよく見知っているのは恐らく彼女だろう。


その為に、何度も何度も…特に僕の昔の女性関係のことでからかわれるけれど。


それでも。


芹霞と出会えた奇跡が、緋狭さんにとっては必然だとしたのなら。


僕は…僕である為に、緋狭さんと出会ったのだと思う。
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