Rest of my Prince
 櫂Side
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少しだけ、頭を冷やそうと…芹霞の元を離れた。


そう、落ち着こうと思っただけ。


「櫂、櫂!?」


その声にはっと我に返り、芹霞に何かあったのかと慌てて戻った時には――


「どうして、居ないんだよ、あいつは!!!」


芹霞は居なかった。


「方向音痴のくせに!!!」


慌てて俺は…鏡の迷宮に繰り出す。


四方八方に拡がる白銀の世界。


冷ややかな色合いが、芹霞の姿を映し出す。

ほっとしたのも束の間、芹霞が沢山居すぎて何を頼りにどちらに進めばいいのか判らない。


錯覚の迷宮。

偽りの迷路。


「…くそっ!!! 出口に続く道筋…判らなくなった!!!」


大きく舌打ちしながら、それでも早く芹霞と合流しようと懸命に進む。


やばい。


心臓がどくどく鳴る。


消したはずの8年前の俺の記憶が蘇る。


――セリカチャントアエナクナル。


「芹霞、何処に居る!!?」


――セリカチャンがイナクナッチャウ。



俺の声に反応する、多くの芹霞。


やばい。


昔の記憶が…俺の意識を覆しそうだ。


不安で。


怖くて。


――芹霞ちゃあああん。


会いたい。


触れたい。


こんな冷たい感触ではなく。


2ヶ月前の…真紅に染まった芹霞を思いだし、背筋が寒くなる。


本物の、温かい芹霞は何処だ!!?


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