Rest of my Prince

13年前――。


その場に、私は居なかった。



あれは穏やかな天気の日。


私達が荏原と体術の稽古をしていた時、それは突然起きた。


荏原はさっと顔色を変えて、一目散に中庭に駆けた。


火に包まれる屋敷。


姉が居ない。


別部屋に休憩中の月と司狼は…明らかに"意思"を持った火にやられて、息がなかった。


私が中庭に行った時、荏原が叫んでいた。


「私が…生き返らせてやるからな、久遠…刹那…」


そこから先は、光に包まれて…景色が薄れていってよく見えなかった。


ただ最後に見た荏原の顔に――


浮かんでいたのが、悲哀なのか笑いなのか…今でも判断がつかない。


目覚めた私は、見知らぬ土地にいた。


私以外の死者が蔓延る"約束の地(カナン)"。


それは偽りの…死者が生きる楽園。


実験で多く犠牲になった者も生き返った。


死者が淫蕩に耽り、子供を産み。


見た目は"生者"なれど、あくまでそれは仮初。


彼らはお互いを貪り、弱肉強食の世界を作り出す。


生前の怨恨を記憶してはいるまいが、まるでしているかのように…強者は弱者を屠り、各務によって植え付けられた"女尊男卑"精神でも息づいているのか、女は男に牙を剥く。


それもまた蘇生し、何処までも…本能のまま続く無間地獄。


< 4 / 235 >

この作品をシェア

pagetop