Rest of my Prince
13年前――。
その場に、私は居なかった。
あれは穏やかな天気の日。
私達が荏原と体術の稽古をしていた時、それは突然起きた。
荏原はさっと顔色を変えて、一目散に中庭に駆けた。
火に包まれる屋敷。
姉が居ない。
別部屋に休憩中の月と司狼は…明らかに"意思"を持った火にやられて、息がなかった。
私が中庭に行った時、荏原が叫んでいた。
「私が…生き返らせてやるからな、久遠…刹那…」
そこから先は、光に包まれて…景色が薄れていってよく見えなかった。
ただ最後に見た荏原の顔に――
浮かんでいたのが、悲哀なのか笑いなのか…今でも判断がつかない。
目覚めた私は、見知らぬ土地にいた。
私以外の死者が蔓延る"約束の地(カナン)"。
それは偽りの…死者が生きる楽園。
実験で多く犠牲になった者も生き返った。
死者が淫蕩に耽り、子供を産み。
見た目は"生者"なれど、あくまでそれは仮初。
彼らはお互いを貪り、弱肉強食の世界を作り出す。
生前の怨恨を記憶してはいるまいが、まるでしているかのように…強者は弱者を屠り、各務によって植え付けられた"女尊男卑"精神でも息づいているのか、女は男に牙を剥く。
それもまた蘇生し、何処までも…本能のまま続く無間地獄。