Rest of my Prince
「お前さ…判りやすいよね。そんなナリしてさ…ウケでも狙っているの?」
久遠が呆れ顔で俺を見ていた。
「せりと遊びたいんだろ? 遊びに行けば? ほら丁度今、紫堂櫂と紫堂玲は話し込んでいるし。今がチャンスだ、何もたもたしてるのさ」
結構…久遠はいい奴なんだ。
言葉はストレートだけど、何と言うか…
「まあ…お前だって、イロイロ頑張ってるんだし? しょげて傍観してないで、堂々と前線出ろよ。もっと自信もってさ」
相変わらずの無表情だけれど。
「お前…いい奴だよな、思ったより」
すると久遠の顔が、嫌そうに歪む。
「何でウルウルとした子犬みたいな目で俺を見るのさ。オレはお前の面倒なんかみないよ、あっち行けよ、尻尾振るなよ気持ち悪い、うざい!!! しっしっ!!」
すげえ態度は悪いけど。
"あの域"にも達してる奴は、どこか一味違うのか?
何かを悟ってるのか?
玲もそんな凄い奴なのか?
そんな時、久遠が立ち上がって。
「せり…何処いくんだよ」
視線を追えば、豆粒芹霞が人ゴミに紛れていなくなる処で。
久遠は…いつでも芹霞を目で追っているのか。
ああ、また俺…嫉妬で胸がぎりぎり言ってる。
「櫂も玲も…玲にかかってきた携帯に深刻な顔して、こっちに気づいていないし。だったら…というか、だからじゃなくても俺が。
俺が迎えに行く」
俺はすくりと立ち上がった。
「ハイハイ、ガンバッテコイヨ~」
完全棒読み状態で、久遠は無関心そうに手を振った。
「おお、アカ。ワンワンが動いたよ。芹霞ちゃん貞操の危機!!?」
「段階すっ飛ばして無理矢理そんな事態になったら、私が骨まで燃やし尽してやるわ!!」
ぶるる。
何だろ、今背筋に寒気が……。
ま、気のせいだな。