Rest of my Prince
 芹霞Side
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「すみません、タクちゃんのお母さんいませんか~?」


「ママあああああ」


「タクちゃんのお母さあああん!!」


うう。

迷子の少年を拾ってしまった。


だってこの子、昔の櫂に似ているんだもの。


ふわふわ。


ぽてぽて。


思わずぎゅうをしてしまった途端、少年は母親を見失った。


完全に――


あたしが悪い。


あたしが誘拐したようなもの。


だから責任もってお母さんに引き合わせたいのに、それらしき影は現れない。


人ごみなら見つかるかと思ったのに…人波が邪魔なだけであたしの声は埋もれる。



これなら、迷子センターに届けて、アナウンスでもかけて貰えばよかった。


だけどこの場所から、どう行けば行き着くのも判らない。


迷子が更に迷子になりそうな状況。


「お姉ちゃん、ママがいないよおおお」


あたしはタクちゃんの手をぎゅっと握りしめて、


「大丈夫、お姉ちゃんが絶対みつけてあげる」


見つけた後は、あたしが迷子になっているだろうけれど。


それは笑って誤魔化した。


やばいな、時間がたちすぎている。


本当に見つかるだろうか…。


そう不安になった時、


「芹霞、お前何してんだよ!!?」


目に鮮やかな橙色。


2m近い巨体。


こいつは――



「煌、ナイス!!!」



絶対使える。


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