Rest of my Prince
 

「ワンワン、ワンワン」


小さい子供が大の苦手の煌は、凄く嫌そうな顔をしたけれど、必死のお願いにタクちゃんを肩車してくれた。


泣き喚いていたタクちゃんは、煌のふわふわとした橙色をわしゃわしゃと撫でて、さっきから"ワンワン"とご機嫌だ。


これなら目立つ。


煌はあらゆる意味で目立つから。


その頭上に子供が居れば、一発で母親は見つけてくれるだろう。


「なあ芹霞。俺…そこまで犬?」


煌が詰るようにあたしを見た。


「な、何? "ワンワン"言ってるのは、あたしじゃないよ?」


「お前も言っただろうが。俺だけワンコ扱いしてよ」


口を尖らせて拗ねてしまった。


「あんた、意外としつこいよね」


「だってそうだろ? どうして俺だけワンコ…」


いつも犬だといわれ続けているのに、何を今更。


「俺だってさ…人間で、皆と同じ男なんだよ。そこら辺、本当に判ってる?」


少しだけ、褐色の瞳が揺れていた。


「男扱いされたい理由、本当にお前判ってる?」


あたしの動きが固まった。


「進展させたいとか思っている俺の心、判ってる?」


「ス、ストレートだね、煌」


ちらりと見る煌は真っ赤な顔で。


タクちゃんに弄られ、頭は爆発だ。


煌は真剣なんだろうけれど。


ごめん、その頭最高だわ。


「ぶわっははははは」


どうしても堪えきれず、煌の頭を指差して爆笑してしまった。



当然――


煌は拗ねてしまった。



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