Rest of my Prince
「覚えていてくれてるだけでも、俺は満足しねえといけないんだけどな…」
そう言いながら、澄み切った空を仰ぎ見る煌。
凄く儚く…まるで消えてしまいそうで。
橙色がくすんで見えてきてしまって。
胸がぎゅっと締め付けられて。
駄目なんだな、煌のこういう…捨てられた子犬みたいな表情。
いなくなっちゃうかも知れないと思った途端、衝動が止まらない。
「煌、何処にも行かないで!!!」
「あ?」
「あたしこんなだけど、嫌ってもいいから…離れて行かないで」
少し…苦しげに精悍な顔が歪められた。
「…何で?」
「煌が大事だから」
「……。俺が大事だから、嫌っても傍に居てくれって…無茶苦茶じゃね?」
「そうだ…ね。矛盾してるね」
「それさ…俺の台詞なんだよな」
「は?」
「お前が俺をどう思おうと一切関係なく。ずっと傍に居て欲しい」
それは真剣で。
力強い言葉に、あたしの動きは制されて。
「……煌」
「俺は無茶苦茶な男だし、馬鹿な男だし。こんなオレンジだし。だけど…俺は、男だから。ワンコじゃねえ。こんな男だけどお前のことは本気で…」
「煌……ストップ!!! ついでにその真っ赤な顔も何とかして!!!」
「だから~~ッッッ!!! 人が必死に告っている時ぐらい黙って……って、芹霞お前…すげえぞ、顔が真っ赤」
「う、うるさいわ!!! 公衆の面前で何!!? 公開プロポーズみたいな…」
ぞろぞろといつの間にやら集まっている、にやにや顔の見知らぬ他人。
ようやく事態に気付いたらしい奴に、周囲から「ひゅ~♪ひゅ~♪兄ちゃんやるぅ~」と口笛が向けられる。