Rest of my Prince
「"約束の地(カナン)"の…白皇の作った人工知能の解析はどうだ?」
「まだ完全ではないけどね、櫂の見立て通り…あの人工知能の突然変異は、偶然じゃない」
瞬間、櫂の顔が強張り…やはりそうか、と呟いた。
「たかが東京の停電如きで、突然変異する程…ベースたる人工知能の造りは複雑ではないんだ。あれだったら、由香ちゃんが育てた僕の人工知能の方が優秀だ。
ただ白皇への"想い"は確かにある。だけどただそれだけで、現実的な電気系統的に…"約束の地(カナン)"の全システムを制御できる程の力が、偶然すぐに蓄えられたとは考えにくい。だとしたら……」
「"必然"。あの東京の停電自体…仕組まれていたか」
「多分。停電時に、何かの…何らかの接触があったのだと思う。今、桜を走らせて、当時の停電被害者に状況聴取させているけれど、少し時間かかりそうだ。何せ…企業秘密に関わる部分だから、被害状況を口に出さないらしくて」
「折角東京が復興したというのに…今度は何が起こるというんだ」
櫂が翳った顔で呟く。
「もう…あんなのはごめんだぞ、俺は」
多分――
同じ場面を思い出している。
「僕だってごめんだよ。もう…あんなことにはさせない」
それは僕の揺ぎ無い根幹となっている。
自分の無力さを嘆いたあの瞬間。
二度と…血に染めたくない。
芹霞を。
「何だか…此処の遊園地が…夢のように思えてくるね。目が覚めたらまた…戦いに巻き込まれる気がする」
櫂は何も答えなかった。
櫂も感じている。
近く――起きる何かを。
だとしたら。
今はただ何もかも忘れて、夢に浸りたい。
危惧するものは何もないのだと――。
suivre.