Rest of my Prince
そんな僕に向けられている、久遠の冷ややかな瑠璃色の瞳。
僕に対しては赤くならないその瞳には、僕なんか相手にもならない存在として映っているのだろうか。
久遠は、櫂に対してだけ牙を剥き続ける。
櫂もそうだ。
芹霞が櫂より以前に永遠を誓った…初恋の相手だから特に、敵意は半端じゃない。
芹霞から永遠を貰えぬ僕は、蚊帳の外。
それが悔しくて。
だから一層、芹霞を目の前で浚(さら)ってやりたくなるのだけれど。
久遠は…煌に対して世話を焼いているフシがある。
そして当初毛嫌いしていたはずの煌も、何故か今は久遠に懐く。
まあ…理由など至って単純だろう。
"あの域"
煌はそれ故に、久遠を崇拝し始めたらしい。
あいつは心を許した途端、警戒心を解いて「犬」になるから。
久遠もぎゃあぎゃあ言いながらも、桜にフラれて1人でいる煌に構っている。
きっと久遠は、元来面倒見がいい男なんだろう。
まるで人懐っこい犬と気まぐれ猫がじゃれあっている図だ。
色々思い返しながら薄く笑っていると、芹霞が朗笑して聞いてきた。
「ねえ。玲くんはさ、デートで遊園地によく来たの?」
芹霞の無邪気さは残酷だ。
顔色1つ変えずに…むしろ興味津々に、他の女のことを聞いて来る。
「どうして…?」
強張る頬を気づかれないよう、いつも通りに笑ってみる。
「ん? カップルって遊園地によく行くものだと弥生とか由香ちゃんが言ってたから。櫂は彼女作らないし、煌は夜専門香水女だし、玲くんは健全なお付き合いしてそうだから、社会調査」
健全…ね。
そう、好奇心で目をきらきらさせられたら、良心が痛むな。
「僕は…年相応の付き合い方はしていないから」
「え?」
「小さい頃から…大人のお付き合い」