Rest of my Prince

芹霞の目が細くなる。


「どんなお付き合い? 着物姿の女の子と背広で中庭鑑賞?」


経験値のない芹霞には意味が判らないらしい。


「あははは、芹霞。それは"お見合い"だよ」


その方がいい。


流されるまま、求められるがままにいた僕の過去など、知らないほうがいい。


君によく似た最後の少女とて、僕のささやかな望みに気づかなかった。


慣れていると…だから、大人の付き合いを求められた。


僕の心の乾きを、気づいてもらえなかった。


「だけど、君との"お試し"は、もっと普通の…楽しいことをしたいな」


それは本音。


「今まで経験したことのない、楽しいことをしたい」


「…うわ、結構プレッシャー」


芹霞の顔が引き攣った。


「テスト…どれくらい出来そう?」


「9割とりますから!!!」


ガッツポーズをする芹霞を見ていると、錯覚してしまう。


「絶対、皆を見返して、玲くんと"お試し"復活させてやる!!!」


芹霞は、僕と付き合いたいのだと。


愛されているのだと。


「何でそこまで邪魔するんだろうね!!? 色々楽しい処に行こうね、玲くん。玲くんの引き篭もり、解消させちゃうから」


…愛されてはいるのだろう、慈母の如く。


所詮は…解消前提の"お試し"の域内。


櫂の陰に徹するために外を出歩かなくなった、僕を心配してのこと。


そして僕の無駄な知識は、君の好奇心を刺激しているんだろう?


そこに…恋愛はないのかな。

僕を意識してくれないのかな。


揺らいでいる…そう思う時もあるけれど、それには持続性がない。


ねえ…僕にずっと恋してよ。

僕に溺れていてよ。


"お試し"じゃいられない程に。



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