Rest of my Prince


「何をどうすれば"重み"が出るのかは判らないけど、本当に好き。伝わらない?」


芹霞は、僕の両頬に手を添え、僕の瞳を覗き込んできた。


「玲くん…駄目だよ、そんな顔しちゃ。また…初めて会った時のような笑顔になろうとしてる。駄目だよ、絶対駄目」


どうして…すぐ見抜くんだろうね、君は。


「櫂は櫂。玲くんは玲くん。それ以上でもそれ以下でもないの」



それ以上になりたい僕は、どうすればいい?


ふっと…甘い香りに包まれる。


僕は芹霞の胸に抱かれて。


「玲くん…そんな顔しないで。お願い、本当の"玲くん"を解放してよ。苦しくなる」


だけど、"僕"が解放されたら…


「どんな"玲くん"でも受け止めるから。そんな気味悪い顔されるよりよっぽどいい」


いつもいつも。


僕はこの作り笑いで生きてきて。


それを"気味悪い"と一蹴したのは君。


いいのかな。


"僕"を解放していいのかな?


「…離れていかない?」


僕は芹霞に聞いた。


「離れない。約束する」



「その僕が――

…狂っていても?」


言い辛い、それを述べた僕の声が震えて。


「どんな玲くんでも」


澱みない、力強いその声に…僕の心が潤ってくる。


ああ、"僕"が悦んでいる。



その時、観覧車が動いた。


まるで、出し抜こうとした僕を赦すかのように。



――俺は、玲を狂わせない。



櫂――



――だから、安心しろ。


お前って奴は…。



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