Rest of my Prince

「ああ…雨やんだんだね」


光が窓から差し込んできて…その眩しさに僕は思わず目を細めた。


そして頂上。


僕は芹霞の腕を掴んで引き寄せ――


「へ!?」


その額に唇を寄せた。



予定していた場所と違うけれど。


多分、櫂からもこれは見えているだろう。



ごめんよ、櫂。


これだけは赦してよ。


円環に続く…恋の折り返し地点、今はこれだけで我慢するから。


何処までも僕の恋路はぐるぐる回り、その度に僕は惑うけれど。


だけど、櫂。


ごめん。


僕は…芹霞が欲しいんだ。


あんなに芹霞を怖がらせて、震え上がらせて。


それでも芹霞が欲しいなんて、本当に浅ましいけれど。


ごめん。


"僕"に気付いてくれる女性は、芹霞しかいないから。



「玲くん!!?」


「ふふふ。幸せになれるおまじない」



僕は…"僕"を解放しようと思う。


正直…怖いけれど。


お前に張り合うには…もう、"僕"しかない。


優しい男だけでは終われないから。



「アカアカアカ!!! 玲くんが頂上で"でこちゅう"しちゃったよ? きっとすごいの予定してたんだろうに、お気の毒~」

「坊が見ていても何か仕出かすなんて、昔の玲には考えられなかったこと。どうして妹ばかりモテるのやら。私だって姉なのに…まだまだ捨てたものでもないと思うけどな」

「あはははは~、今度レイクンに迫ってみたら? レイクンなら流されそうだし、経験豊富だからアカも満足できるんじゃない?」

「私を満足させようなど100年早いわ。そうだな…私好みに鍛えてもいいな。妹の前で誘ってみるか。あいつをからかうと中々によい反応返すしな。ふふふ」



向かい側でにやにやしながら見ている赤と青。


何を言っているかは判らないけれど、全身に寒気がくる。


よからぬ不安が現実にならないことを、僕は切に願った。



Fin.


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始まりも終わりもない円環で――

巡る僕の恋心は…止まらない。

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