Rest of my Prince
桜Side
****************
視線――。
誰もがもう気づいている。
今では確実に視界の中に入る、赤色と青色。
しかし一定の距離を保って、それ以上踏み込もうとしない。
何故、ここまで視線を寄越すのか。
「なあ…"桜"。お前持ってるクマ、せりから貰ったの?」
突然久遠から話しかけられた。
私は、こくんと頷く。
「どことなく歪で、せりの指先の絆創膏見てれば…せりの手作りか。それに対してあいつらが何も突っ込まないところを見れば…きっと何処か噛んで、自分も協力したと自己主張しているんだろう。
男のくせに手芸なんて…ま、お前の女装を許容してるあたり、そんなのはどうでもいいことか」
そう嘲笑って私の手の中の灰色のテディベアを一瞥する。
芹霞さんと櫂様と玲様と…きっと戦力にはならなかったろう馬鹿蜜柑と。
皆で作ってくれた新しいクマ。
黒いクマはこの地で捨ててしまったけれど、どうしてもこれは捨てられない。
私が――執着している。
「ところでさ、お前…傷はいいの?」
瑠璃色の瞳が私に向いた。
私はまた、こくんと頷いた。
「だけど…克服出来てないだろう?」
何を?
聞き返さなくても、私は判る。
「緋狭に…抜いて貰わないの?」
久遠という男は、私の体の変調を見抜いているのだ。
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視線――。
誰もがもう気づいている。
今では確実に視界の中に入る、赤色と青色。
しかし一定の距離を保って、それ以上踏み込もうとしない。
何故、ここまで視線を寄越すのか。
「なあ…"桜"。お前持ってるクマ、せりから貰ったの?」
突然久遠から話しかけられた。
私は、こくんと頷く。
「どことなく歪で、せりの指先の絆創膏見てれば…せりの手作りか。それに対してあいつらが何も突っ込まないところを見れば…きっと何処か噛んで、自分も協力したと自己主張しているんだろう。
男のくせに手芸なんて…ま、お前の女装を許容してるあたり、そんなのはどうでもいいことか」
そう嘲笑って私の手の中の灰色のテディベアを一瞥する。
芹霞さんと櫂様と玲様と…きっと戦力にはならなかったろう馬鹿蜜柑と。
皆で作ってくれた新しいクマ。
黒いクマはこの地で捨ててしまったけれど、どうしてもこれは捨てられない。
私が――執着している。
「ところでさ、お前…傷はいいの?」
瑠璃色の瞳が私に向いた。
私はまた、こくんと頷いた。
「だけど…克服出来てないだろう?」
何を?
聞き返さなくても、私は判る。
「緋狭に…抜いて貰わないの?」
久遠という男は、私の体の変調を見抜いているのだ。