Rest of my Prince
芹霞さんは。
妙な処が聡すぎて。
人を、初見で見抜くことがあるから。
出来ればそれだけは避けたい。
芹霞さんのことだ、私が幾ら黙っていてくれと懇願しても、絶対私の根幹治療を諦めない。
折角今、緋狭様の元で強くなろうとしているのに。
「ま、お前達の様な捨て身の奴らがいれば、紫堂櫂も安心だけどね。オレとしては…あいつが失脚して路頭に迷おうがどうでもいいけれど」
「……失脚?」
聞き捨てならないその言葉に、私は引っ掛かりを覚えて。
「お前は…例えば紫堂櫂から紫堂がなくなって、ただの櫂になっても、仕えていくつもりか?」
「勿論」
私の言葉には迷いなく。
それを聞いた久遠は、鼻で笑った。
「外界は…大変だね、イロイロと…」
何かを…知っているのだろうか。
今、解放されたとはいえ、こんな人工都市で。
私達が知らぬ何かを、彼は掴んでいるというのか。
何か…"約束の地(カナン)"と関係ある何かが…櫂様を襲うのだろうか。
そう思わずにはいられない。
久遠という男は。
飄々として掴み処がなくて。
無関心無表情でいて、心がある。
私には持ち得ない、情がある。